雨宮副総裁が新潟県金融経済懇談会で講演されていたので記録

記事本文
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/data/ko210721a1.pdf より 
2.経済・物価情勢
(経済情勢)

飲食や宿泊などの対面型サービス部門を中心に、経済活動への下押し圧力は継続しています。もっとも、海外経済がはっきりと回復するもとで、輸出や生産は増加が続いており、企業部門では、収益の回復が設備投資の増加に繋がる前向きのメカニズムが働き始めています。このように、わが国の景気は、感染症の影響から引き続き厳しい状態にありますが、基調としては持ち直しています。

米欧では、ワクチン接種が進むもとで、サービス消費を含めて経済活動が活発化しています。米欧経済の改善は、回復を続ける中国経済とともに、貿易活動を介して世界経済全体を押し上げています。
わが国の企業部門です(図表2)。

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短観の業況判断は、対面型サービスでは引き続き多くの企業が「悪い」と回答していますが、全体では4四半期連続で改善しています。企業収益も全体では改善しています。企業収益が改善するもとで、設備投資は、一部の業種に弱さがみられるものの、機械投資やデジタル関連投資を中心に持ち直しています。
家計部門です。企業部門に比べると、家計部門の改善の動きは緩やかです。個人消費は、公衆衛生上の措置が続くもとで、足踏み状態となっています(図表3)。

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当面の個人消費については、感染症の影響から、対面型サービスを中心に低めの水準で推移するとみています。もっとも、先行してワクチン接種が進んでいる諸外国の事例を踏まえると、わが国でも、先行き、対面型サービスを含め、個人消費は再び持ち直していくと考えています。こうした個人消費の背景にある雇用・所得環境については、弱い動きが続いていますが、大幅な悪化は回避されています。失業率は、昨年上昇しましたが、その後は3%程度で推移しています。そうしたもとで、雇用者所得は前年比プラスに転じています。今後、内外需要の回復にラグを伴って、雇用者所得は持ち直しに転じ、緩やかに増加していくとみています。
(物価情勢) 

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消費者物価をみると、生鮮食品を除いたベースの前年比は、昨年 12 月に、エネルギー価格の下落やGo To トラベルの物価指数への影響などにより、▲1%まで下落しました。もっとも、様々な一時的要因を除いたベースでは小幅のプラスを維持しており、経済の落ち込みに比べると、物価は底堅く推移してきました。 (略) 人々は感染症への警戒感からサービス消費を抑制しているため、値下げをしても客足は戻りません。また、様々な感染対策によるコスト増加も、値下げを行いにくくしています。
3.日本銀行の金融政策運営

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こうした対応は、政府の施策や金融機関の取り組みと相俟って、効果を発揮しています。もっとも、企業等の資金繰りには、なお厳しさがみられています。感染症の影響の収束には暫く時間を要し、資金繰りにストレスのかかる状況は続くと見込まれます。

(略)

「特別プログラム」の期限を来年3月まで半年間延長することとしました。日本銀行では、今後とも、現在の金融緩和措置をしっかりと実施していく考えです。

(略)

やや長い目でみた政策運営スタンスについてご説明します。先程申し上げたように、先行き、物価上昇率は徐々に高まるとみていますが、2%の「物価安定の目標」の実現には時間がかかると予想されます。足もと米国などでは物価上昇率がはっきりと高まっていますが、わが国では、物価上昇が鈍い状況にあります。この点を踏まえると、日本銀行としては、「物価安定の目標」の実現に向けて、強力な金融緩和を粘り強く続けていく必要があると考えています。
4.気候変動問題に関する日本銀行の対応

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わが国を含め主要国は、脱炭素の目標を掲げて政策対応を進めています。気候関連政策は、基本的には国会・政府の役割ですが、この問題は中央銀行の使命である「物価の安定」や「金融システムの安定」にも関係します。すなわち、気候変動問題は、中長期的に、経済・物価・金融情勢にきわめて大きな影響を及ぼしうるものです。
金融政策面での対応としては、民間金融機関の気候変動問題への取り組みを支援するための新たな資金供給制度を導入することとしました。

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その際、特定の産業や個別の企業への資源配分に関して、具体的な介入をできるだけ避けることに配慮しました。気候変動問題の解決に向けた政策対応としては、温室効果ガスの排出規制や新技術開発への補助金などが考えられますが、こうした個別の資源配分への直接的な介入を伴う政策は、国会・政府が行うべきものです。

(略)

金融機関自らが判断する気候変動対応投融資に対して、日本銀行がバックファイナンスするというアプローチを採ることにしました。そのうえで、資金供給を希望する金融機関に対し、気候変動対応に資する取り組みについて一定の開示を求めることで、規律が働くことを期待する仕組みとしています。

特に重要と思われる箇所は以下
引用
人々は感染症への警戒感からサービス消費を抑制しているため、値下げをしても客足は戻りません。また、様々な感染対策によるコスト増加も、値下げを行いにくくしています。

(略)

感染症というショックからの回復局面で、企業の価格設定スタンスがどのように変化するか不確実性は大きく、注視する必要があります。

上記、説明のように、日本ではインフレが起こりにくい*1であろう。
したがって、ハイパーインフレが起こると指摘している論者は、デマを流していると見なされても反論しようがないと思われる。

気候変動問題に対する中央銀行の対応は、行政面*2からも配慮されていると思われる。欧州を手本にするということから、欧州以上にやるということも考えられる。
何が気候変動対応に資するとみなされるかの基準や分類、いわゆるタクソノミーを巡る議論は、現在も内外で続いており、今後、変化する可能性もあります。
今月の、黒田総裁定例会見*3でも、答えられていたように

”ある意味で日本銀行は日本最大のマクロエコノミストの集団でもあり、色々な方面の専門家も揃っています。更に、内部だけでなくて、学界や経済界の人たちとも様々な意見交換をしています。
https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2021/kk210719a.pdf より”

先行事例を研究し、緻密な試算とシュミレーションを行っているので、せいぜい、守旧的左派の代弁しかできない人々が、口を挟んだり、口を出すことではない。特に朝日新聞。


<注釈> 
1:筆者(@manetary)のこれまでの言及は以下
日本でインフレは起こりえるのか
https://macroeconomicpolicy.blog.jp/archives/8799762.html
日本でインフレは起こりえるのか2
https://macroeconomicpolicy.blog.jp/archives/8955048.html
2:もちろん行政法も含まれる。
3:遷移先は、日銀pdf
筆者(@manetary)は以下
https://macroeconomicpolicy.blog.jp/archives/9473707.html









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